第一講座 「そろばん指導で子供は変わる」  珠算指導者講習会 2010/09/20
       ~学習意欲を高めれば子供が伸びる~

講師 尼崎市立浦風・難波小学校 計算科講師 田村 聡子 先生 講義概要まとめ

 

◆尼崎市の計算科講師となったきっかけ

 

 武庫川女子大学で教員免許を取得しましたが、教育実習以来ペーパーティーチヤーでした。幼い頃よりそろばんをずっとしてきましたし、さらに教員免許を持っている事が、私の特色でもありました。尼崎の計算特区のお話がありました時に小学校でそれもそろばんを教えるというこの二大キーワードが是非ともこのプロジェクトに参加させて頂きたいと思った理由でした。

 

◆スタート時の状況


~平成18年度~

 

 今小学校で学級崩壊等様々な問題を抱えている中、尼崎市の小学校の現状も例外ではありませんでした。保護者不在(ネグレクト) の子供達の存在。親の育児放棄により学習道具や朝食を与えてもらえない子供達が想像以上にいました。

 

 尼崎の小学校の学力は、残念ながら全国レベルに達していませんでした。四方4血に43校が近接。学力格差があり、南のエリアの子供達の方が学力が低く、北のエリアの子供達は高いという構造になっていました。
学校でそろばんの授業をする事については、その意義を問う声も一部にあり、歓迎された中でのスタートではありませんでした。

 

◆指導したこと

 

 そろばんを教える以前にまず重点に置いた事は授業態度、姿勢、挨拶、持ち物、道具の管理、プリントの整理。指導においては加減算から乗除算。そして読上算。運指、連珠を徹底しました。初心者30人を前に全体で指導するのはとても大変でした。短時間計測。表計算。特にフラッシュ暗算は大人気で、ご褒美でします。又、阪神電車競算なるものを作りました。阪神沿線で育つ子供達に、より親しみが持てるように、3人1組チームを組み、尼崎を出発し、ゴールの梅田を目指します。工夫を凝らし興味を持ってもらいながら週に一度、45分授業と10分×2回の練習、年間約32時間の指導で各学期末には成績を出します。(阪神電車競算、お手製のそろばんカードを披露されました。)

 

◆変化

 

「そろばんが楽しい」「計算が得意になった」等、浦風小学校では計算科が導入された年から全教科の成績が全国レベルに達しました。何より嬉しかったのは、不登校の生徒が夏休みの特別授業を経て2学期から登校するようになった事でした。彼女にとっては、そろばんがきっかけになったのでしょう。これは子供達が活躍できるチャンスの場が一つ増えたという感覚でとらえています。挨拶ができるようになりました。私は教室内下克上と呼んでいますが、普段冴えない子がヒーローになったりします。微笑ましいなと思うのが、両親や祖父母から教えてもらう子供もいて、これは家庭内のコミュニケーションに繋がったのではないかと思っています。

 

◆そろばん学習から、何が学べるのか?

 

体感 私は読上算が好きです。授業の始まりには、なるべく読上算、読上暗算をします。子供達は静かになり集中して取り組みます。耳で聞いて、脳で判断し、目で確認して指を動かす。この一連の作業は脳の活性化に繋がり身体知を得る要素になっているのではないでしょうか。見取算や暗算においても呼吸なり、リズム感は大切で、それを養うことがすべての学習の向上に通じていると思います。


達成感 簡単な計算でクラス全員が一緒にできた!という達成感は子供達のモチベーションを上げます。そして進級する喜びがあります。

 

緊張感 読上算には聞き逃せない緊張感!制限時間の設定で集中力も備わります。チームで合計を出す競算や総合計などの口数の多い計算にも緊張感があります。


学ぶこと 3、4年生の2年間で6級程度の内容ができるようになります。
読上暗算は2桁の加算2~3口、読上算は4桁の加減算、かけ算の九九、割り算の立商もできるようになりました。そして何より、先生のお話を聞く事、繰り返し練習することで、努力し我慢する事を学んでくれていると思います。筋道を立てて考え、見通す力を養う。これを身体知の獲得と私は呼んでいますが、人間カアップのきっかけになったのでは。その結果、算数以外の教科でも学力アップに繋がったと思います。


◆私の感想


学校と塾とでは、反目する部分もありますが、『子供を育てる』 という精神は同じです。ただ塾においては、本人が習う気持ちがあり、保護者の理解もあり、月謝を払って来てくれている。実は私達は幸せな環境で子供さんを預かり、そろばんを教えて来たという事を学校へ行かせて頂いて改めて気づかされました。大切にしなくては!という思いです。


 叱ることは、とても難しい事で、他の先生の授業を拝見する中で、本当に上手に叱る先生がいらっしゃるので勉強になります。

 

 子供達は、やみくもに「わからない!」とよく言います。やる気がない時に言う事もありますが、構ってほしいというメッセージなのです。「わからない!」と言う子供を置き去りにせず、愛情を持って指導して行かなければならないと思っています。

 

◆今後の課題

 

 目新しいものに対する一時的なブームは過ぎたと感じています。今後は継続的に高水準で皆さんの興味や関心、成果を上げていかなければならない局面を迎えていると思います。平成25年度までは特区として継続されますが、それ以降は、まだ未確定です。


 現在43校に24名の指導者が、孤軍奮陶していますが、これからは横の繋がりを持って、研究授業や指導法の研錆、教材研究等、指導者間の疎通が大切だと思います。

 

 できれば、講師を1校に2~3名派遣し、級別に指導する体制が作れないものかと考えています。

 

 尼崎市や一部の私立学校だけの特別な授業ではなく、文科省に働きかけて全国展開できればと思います。それには、指導者の確保と育成が必要となり、今後、大学の教育学部で、そろばん指導法という講座が開かれる事あるいは、有段者の大学生に向けて指導者講習会が開催される事を期待します。

 

 最後に、「イグサのすべて」という本をご紹介致します。たたみ効果の導入。一般教室に比べ、たたみ教室では、リラックス効果や集中力の持続効果が認められ、学習効果が上がったというデータに基づいてまとめられた本です。計算科ルームに、たたみ効果を導入できないものかと考えています。興味のある方は、一度お読みになって下さればと思います。ありがとうございました。


(教養委員 赤井良子)

大阪珠算月報706号 平成22年11月20日(土)発行 より承認転載

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