《日中珠算交流活動からの教訓》 中国珠算教育問題研究会 会長 大谷 茂義

 

 さる9月12日守口門真商工会議所の会議室において、「2010年上海万博・珠算交流訪中団」の帰国報告会を開きました。


 この一年間、当初「上海万博で珠算公演」を目指し、各珠算団体のご支援も含め、並々ならぬ努力を積み重ねてきておりましたが、直前になって予期せぬ「諸般の事情」によりやむなく実現不能になりました。すでに30名(生徒8名を含む)近くの各地からの応募があり、応募者のご要望を聞くと、「せっかく予定も組んでおり、なんとか訪中できないか」ということでした。そこで、急遽方向を変え、当初の期待を裏切らない程度の珠算交流実現に向けて「中国珠算心算協会」との折衝を始めたのです。

 

 若干の紆余曲折がありましたが、上海では夏休み中でしかも日曜日の「董李鳳美康健学校」で、南通市の珠算博物館では、当日が「休館日」であったのに、それぞれ最高のもてなしを準備してくれておりました。


 上海の康健学校は日本でいうところの「支援学校」で国の支援の下に発達障害児専門に教育している学校です。私は二度目の訪問でしたが、ここで一番感激したのは、生徒の母親がでてきて自分の息子が珠算のお陰で指が動くようになったいきさつを涙ながらに語ってくれたことです。ここの先生方の大部分は華東師範大学出身と聞いていましたが、珠算に関しては未経験者だったのです。それでも、放課後みんなで研究しながら生徒に合わせた珠算の教材をそれぞれ自分で考え工夫をしてつくっていると言っていました。もちろん上海珠協の支援があってのことだと思います。

 

Otani1


 南通市の珠算博物館へは上海から行くと長江(揚子江)を渡らなくてはいけません。前に行った時はフェリーで渡りました。この度は橋がかかったのでもう少し早く行けると思ったのですがやはり3時間はかかりました。長江をまたぐ橋は明石海峡大橋と比べても倍以上はあるでしょう。


 博物館に着くと早速館内を見学させてもらいました。休館日だったので見学するのは我々だけでした。そして館内にあるレストランで昼食をとりました。すべて博物館側のご配慮で準備されておりました。驚いたのは、中国側の子ども達と日本から来た子ども達を同じテーブルにしてくれていたことでした。私が当初心配していたことは全くの徒労でした。子ども達は「初対面」であるのにすでに“言葉の壁”と“食事の壁”を超えて打ちとけあっていました。この後の「交流の場」でも岡部先生の巧みな誘導もあり見事な交流(珠算も含めて)の花が開いていきました。


 永い日中珠算交流の中で、これまで生徒達が参加してきたことと言えばそのほとんどが「選手」としてではなかったでしょうか。しかし、この度は、参加したのが一般の普通の生徒達だったのです。選手という「肩の荷」を持たないこの子ども達の和気あいあいとした珠算の交流を見て、これからの交流の在り方を思い知らされたように感じました。(→↑)

(右欄上へつづく)


back  top

(左欄下より)

 上海万博の見学は、二日目の7月26日でした。いろいろと予備知識をもってやってきましたが、万博開会してすでに4カ月たっており、問題点も大方スムーズに行っているようでした。我々のような「老人」を気遣う風習はたいへんありがたかったです。少し奇妙に感じたのは、添乗員が日本から準備してきた折り畳みのパイプ製の椅子は百円でした。万博入口周辺で売っていたプラスチック製のちゃちな折り畳み椅子を十元(約140円)で売っていました。どちらも中国製です。一体誰が一番儲けたのでしょうか。

 

Otani2

 

 万博会場でやはり気になったのは、「珠算公演」を予定していた『アジアン広場』でした。万博会場で一番人の集まる「中国館」の横にありました。近づくと、和太鼓の音が遠くまで鳴り響いておりました。もしここで「珠算公演」が成功していたら・・・という思いにかられました。どんなに規模が小さくても、その余波は必ず広がっていくに違いない、と思っていたのです。

 

 当初予定した「珠算公演」は実現しませんでしたが、その代わりに行ったこの度の珠算交流の旅は果たしてどのような評価をすればよいのでしょうか?

 

Otani3


上海の康健学校で張徳和会長(中珠協顧問)とお別れをするときに、私の耳元で囁くように言った言葉が忘れられません。


「大阪万博での成果を持つ貴方がたが、今回上海万博で珠算公演を、という提案をされたことはたいへん貴重なものでした。これに対し中国の珠算界が応えられなかったことは誠に残念です。中珠協の理事会で必ずこのことを意見として提出します」(終) 

「写真の説明」
右下の写真は、7月27日中国珠算博物館を訪問した際に、博物館館長から戴いた栄誉館員証です。以前上海珠協から推挙された『上海珠協珠算学術顧問』に続いて我々研究会が永年にわたって活動してきた賜と感謝しております。
また、左側の写真も同じく博物館を訪問した記念に、博物館に保存されている珍しい“算盤”の一つ、『子玉算盤』のレプリカです。この算盤は、上四下五珠あり、枠には大きい数と小さい数の文字が刻まれておりその説明も書いてあります。

(寄稿: 森友 建 会長 2010/1⅟16)