珠研 No.60 幼児教育から珠算学習へ  岐阜珠算振興会   赤堀 真基

 私は現在小さな教室ですが、そろばん塾を営んでおります。同時に小学3年生と1年生の二人の娘の母親でもあります。


 以前は学習塾とそろばん塾を曜日を交互にしてやっておりましたが、現在はそろばん塾に一本化いたしました。今まで学習塾だった曜日も全てそろばんの日に充て、授業時間は変わらず夜9時までやっておりますが、「負担」という文字は私の中には一切ありません。自分の大好きなことを仕事として常に携ることが出来る喜びを感じ得ております。 また、この珠算の世界で「全国を目指したい!」という志だけは強くあります。多くの人に支えていただき、色々とご教授いただいているお陰で、夢に向かって邁進しています。そしてキラキラと輝く目をした元気な子供達から、たくさんのパワーを分けてもらい、毎日を楽しく過ごしています。

 

 さて、僭越乍ら私なりの教育理念ではありますが、珠算学習の大切さと、また娘が珠算を始めるまで行っていた右脳教育についてお話をしていきたいと思います。

 

「右脳教育」

 上の子が、生後2ヶ月の頃に、右脳教育を始めました。どこかの教室へ通うというのではなく、全て母親である私自身が先生となります。


 何故ならば、よく「三つ子の魂百まで」といいますが、実際、3歳までに脳の80%は形成されるからです。しかも、神経回路の中でも感覚野の回路は1歳ごろまでにほぼ完成してしまいます。記憶の上で大切な五官が出来上がるというその大事な時期を逃してはいけないと思ったのです。その期間に、目から耳から刺激を与えることにより、子供は自然にそれを吸収できるというわけです。


 たまに、「意味が分からないのに教えても無駄だ」という人がいますが、それは大人の言い訳ではないかと思います。
幼児期のうちは、意味や理解を一切求めず、インプットのみでOKなのです。右脳は左脳の10万倍もの記憶が出来、処理が早いといわれています。右脳という大容量のハードディスクは、視覚から得た画像や聴覚から得たものも、そのままを記憶します。一見反応が無いように思われても、しっかりと右脳にデータが蓄積されているのです。そして、それらが自然に後からアウトプットされるようになります。


 例えば大人でも、何気なく耳にしているCMソング・・・特に目に留めることもなく、真剣に聞いているわけでもなく、覚えようとしているわけでもなく。でもある日その歌を歌っている歌手を目にした時に、「聞いたことがある!」と思うはずです。その後に、再びそのCMを見た時に、「前にテレビでこの歌を聞いたことがある!」とリンクしていきます。そのように、耳からの情報と目からの情報が一致して、理解へと導いていくのです。また、映画やドラマの主題歌だった場合、その歌を耳にすると、自然とその映画やドラマの情景が浮かんだりしませんか。青春時代によく聴いていた音楽を耳にすると、懐かしさと共にその時代の思い出が走馬灯のように映し出されたりしませんか。しかも、思い出されることが、画像として浮かび上がっているはずです。それと同じように、何かキーポイントとなるものを目にした時や耳にした時に、思い出そうとしなくても自然と関連したものがイメージ化されて見えてきます。
では具体的に実際にどのような教育をしてきたかと申しますと、主に行ったのは、情報が書いてある絵カード(国旗・星座・偉人など)のフラッシュです。1回十枚ずつ、絵カードを見せて、私が名称を読上げる、ただそれだけです。10枚ほどですと、かかる時間もほんの10秒程度です。それを朝と夕方と夜と3回に分けて行いました。月数が経つにつれ、1回の枚数を少しずつ増やしていったりします。ほんの数十秒程度のことなので、大体は大きな目でじっと見つめていることが多いのです。


 そして、そのアウトプットが出来た時期を紹介しますと、1歳6ヶ月までにひらがな・アルファベットを読むことが出来、1歳10ヶ月の時、国旗を見せると、国名と首都名を読上げるようになりました。また、あるクイズ番組で人物名を答える問題が出題された時に、たまたまその画像を見た娘が「伊能忠敬」と指を指して答え、周囲を驚かせたこともありました。2歳になる頃には、絵本も一人で読めるようになっていたのです。

 

 2歳4ケ月の時には、1日1000枚ほどのカードを、自分でめくっては大きな声で読上げるというのが習慣になりました。その時が一番本人の学習意欲が強く、自ら棚を開けてカードを出しては、私が朝食の準備をしているわずかな間にも、300~400枚のカードをフラッシュし、多くの単語や物の名称を覚えました。

 

 その他、歌のCDはよく聴いていました。クラシックや童謡を主に覚え、その中には九九の歌もありました。実は、あるテレビ番組や新聞記事で、娘が「1歳で九九を覚えた」ということが採り上げられ、問い合わせの多かった一件ですが、九九が1歳6ヶ月で言えるようになった、というよりは、九九の歌を歌えるようになったということなのです。その時はまだ九九の意味は分からなかったのですが、その後ドッツで数字を表すカードのフラッシュと九九の歌との併用で、九九の概念が一発で理解できるようになったというわけです。あとは、速読・速聴・積木・迷路・パズル・視幅拡大のための訓練等を行いました。

 

 また、幼児期は「お昼寝」がとても大切です。レム睡眠中に、脳にインプットされた情報が整理され、記憶が定着されるからです。新しいことを覚えれば覚えるほど、レム睡眠の時間が必要になるため、お昼寝の時間だけはしっかり確保してきました。

 

 そして、娘が3歳1ヶ月の時に「IQ186、4」と測定され、何度か紹介されたことがありました。

 

「珠算学習の大切さ」

 3歳を過ぎ、右脳教育だけではいけないと考えました。親や周囲からの環境のみならず、自らの好奇心に従い、無理せず楽しく学ぶことができるよう、「そろばん」を選択。

 

 何故なら、右脳優位な時代はもう過ぎつつあるからです。珠算式の暗算は右脳を使い、それまでの過程や読み書きで左脳を使い、両脳のバランスが取れるため、3歳以降の習い事としてはこれぞ最適である!と思ったのです。
実際にそろばんを本格的に始めたのは、幼稚園に入園した春。その時既に九九を覚えていたこともあり、乗算も除算も難なく覚えてしまい、4歳で日商検定3級、5歳で日商検定1級に合格と、順調に進んで行きました。

 

 そして今日まで、珠算学習を続けてまいりました。ただ、一番大切なことは、全て押し付けや強要ではなく、自らの学ぶ意志があるかどうかが重要なポイントだと思っています。我が家の場合は、3度の食事と同じように、絵カードフラッシュも1日3回に分けて行い、そろばんも、同じリズムで1日3回に分けて行っておりました。即ち、それが生活のリズムとして定着しておりました。ですので、たまに「そろばんをやりたくないとかやめたいと思ったことはないのか」と問われても、生活の一部になっているため、そういうことを考えることすら不思議なことだと娘が話します。その上、そろばんが楽しくて仕方がないようなのです。今ではエピソードとして残っていますが、年長のお泊り保育の時は、「夜のそろばんができないから、お泊り保育を休む」とまで話していたほどなのです。

 

 そして、珠算を通して目には見えない素敵な宝物をたくさん見つけ出すことが出来ました。珠算界では数多くの素晴らしい出来事や出会いがありました。トップレベルの選手たちからは、技術だけではなく、人として大切なことを、存在そのもので自然にご教授いただきました。また合同練習会や競技大会などを通し、多くの刺激をいただきます。子供にも「競争心」は必要なことであり、自分自身に挑戦することも大切なことです。そして練習量や努力が必要だということも自分で悟ることが出来ます。そろばんの効用として謳われる忍耐力や集中力は勿論のこと、指導者や保護者、周囲の環境、全てのことに感謝の気持ちが自然と生まれ、心豊かに育ってくれたことが特に嬉しく思っています。そして珠算学習で得られた効果は、学習にも当然大きく役立ちました。

 

「珠算の学習応用力」

 現在小学3年生の娘は、学習塾に通わず、自宅学習を続けております。中学入試の問題は、傾向が違うということは周知のことであり、学校の授業で習う内容だけでは、とても対応できません。中学受験をするかどうかは未定ですが、そのための勉強はしています。しかし、珠算学習によって活性化された脳は、中学受験に必要な「閃き」「直感」という右脳力が培われており、考え方の柔軟性があります。出題されがちな「空間図形」もイメージしやすくなっています。国語では、読解力には欠かせない忍耐力や、また、文章全体をとらえやすくなります。漢字も形でイメージ出来る能力をも身につきます。そして記憶の領域は広く、やはり何と言っても計算力はあらゆる面で生きてきます。

 

 娘の場合も、日程が可能な範囲で全国模試を受けて常に自分の位置を把握し、大きな刺激をもらい、向上心につなげております。塾に通わず、どのように学習をしているか、と問われたこともありますが、その時は自信を持って「珠算学習のお陰である」と話します。漢字検定では中学生の学習に入っておりますが、何でも先取りをすれば良い、という考えではなく、その都度の目標を課し、挑み取り組むことが大切であると思うのです。計画を立て、それを実行しようと心掛けたり、自分の行動に優先順位をつけることが脳の活性化にも繋がります。

 

 また、娘は本を読むことが大好きで、1日に数冊は必ず読みます。漢字検定の勉強の際も、分からない言葉は自分で国語辞典や漢字字典を引いて調べています。それらを生かし、作文や感想文など、全体を捉え素直な気持ちを表現できる能力には長けていると感じております。今年の夏の作品でも、数々受賞をいただきました。

 

 それでは最後に、娘が夏休みに書いた作文を紹介させていただきたいと思います。岐阜県教育委員会で、「特選」に選出され、新聞に掲載されたものです。指導者として、そして母親として、涙が溢れました・・・。

 

「頂点に立つ人から学んだこと」

三年二組 赤堀 愛果   

 今年の夏休みの間に、そろばんの全国大会が三度も行われました。全国大会では、日本一を決めるのです。そんな大きな大会がこの夏に一気に集中するなんて、今年初めてのことでした。でも、日本一を決定するということは、学年は一切関係ないということです。小学三年生の私は最年少であり、当然たち打ち出来るどころではないことは分かっています。それでも出場するからには、全てに一生懸命、力を出し切りたいと思いました。そのために、毎日毎日練習を頑張りました。

 朝は五時半に起きて、マラソンをして、朝食を済まして、それからそろばんの練習をします。午後は昼寝をした後に、また練習をします。夜はそろばん塾で練習をして、寝る前にも読上げ算の練習をします。その生活を、毎日続けました。
 そして向かえる最初の大会は、「名人戦」。二年に一度のビッグイベントが、今年はなんと岐阜市で行なわれたのです。憧れの選手たちが岐阜に来てくれるということが、何だか自分の家に来てくれているかのようで嬉しくて仕方がありませんでした。
 結果は、私は自己最高点で、小学生では第三位の成績となりました。でも、全体としては上位三十二名の中にも入れず、まだまだ実力不足であるということを実感しました。    
 そして優勝をして名人位についたのは、土屋名人です。なんと、五代連続の名人位です。九年間、トップの座を守り続けるために、相当な努力をされたのだと思いました。
 土屋名人には、私が五歳の時に初めて会いました。その時に模範演技を見せてくれて、強れつにすごい!と感じたことをよく覚えています。でもそれだけではなくて、とってもやさしく、私に対しても丁ねいに話をしてくれたことが嬉しくて、私の憧れの存在になりました。その後、あるテレビ番組の企画で、土屋名人が私の家に来てくれたことがありました。私は驚きと緊張で固まってしまいました。その日が過ぎてから、あれは夢だったのではないかと思うくらい、私にとってはすごく嬉しくて大切な思い出となりました。
 そして、次に八月八日の大会でも、土屋名人が優勝しました。
 一方で、その時の私の成績は自己記録にも遠く、悪い点数を出してしまったことが悔しくて、涙が止まりませんでした。でも、本番の結果が実力であるということが分かっています。だって、土屋名人は、いつもいつも調子がいい日が大会に当たるわけではないですよね。体調が悪い時もあると思うけど、それでも日本一になれるというのは真の実力があるからだと思うのです。日本一というポジションを維持し続けるプレッシャーに打ち勝って、努力を惜しまず、自分自身に挑戦をし続ける名人を、心から尊敬します。
 珠算界トップレベルの人は、人としてもお手本となる方ばかりです。それが珠算界の魅力だと思うことがよくあります。だから私も、日本一を目指したいと思うのかもしれません。
 第一線で活躍される選手は、たとえ点数が悪くても、それが自分の実力であると、決して言い訳をしません。「今日は」という言葉は一切口にしないのです。「今日は調子が悪い」「今日は疲れている」「今日は忙しかった」と言っていてはまだまだ自分に甘いということだということが分かります。
 それに、今年はオリンピックがありましたが、トップアスリートが「自分が弱かったから負けた」と話すのが印象的でした。世界で二位に輝きながら、それだけの実力がありながら、「自分が弱かった」と言えるのです。精一杯取り組んできたからこそ、どんな結果でも受け止められるのでしょう。ただ、悔しさはまた別にあることは当然のことだと思います。反省をしっかりして、また課題を自分で見つけることも、次へのステップへとつながるのだと教えていただきました。
 そして、この夏締めくくりの最後の全国大会が、二十四日に大阪で行われました。私は、珠算のトップの人たちの姿や、オリンピック選手の言葉などを胸に、自分も頑張りたいと思いました。最年少でもそれを言い訳にせず、一生懸命練習をした自分を信じて、ぶつかっていこうと思いました。
 そしてその結果は、日本一には遠かったけれど、小学生では第五位として、表彰していただきました。準決勝に上がれた種目があったことや、大人の人たちと同じ条件で一緒の舞台で戦いを出来たことを、とても嬉しく思いました。
 また来年、日本一を目指して挑戦をしたいと思います。そのために、これからも毎日毎日練習を続けて、技も心もきたえていきたいと思います。

                                               以  上

《編集部より一言》
 赤堀先生は、日珠連岐阜珠算振興会に所属されており、指導上で一番大切な継続は力なりをお子様を通して実行され、見事成功されておられます。長女の愛果ちゃんは、「2008年度全国あんざんコンクール3年生の部」全国2位、「そろばんコンクール」においては全国1位に入賞されております。
 原稿を読ませていただいた時に、ぜひ先生方にも読んでいただけたらと思い、承認転載お願い致しました。

《HP編集責任者より》

 HP転載の際に、オリジナルファイルでは句読点が全角コンマ( ,)と全角ピリオド( .)で表記されていましたが、読みやすさ見やすさを重視して日本語句読点( 、 )と( 。 )に置換させていたきました。また作文を除く本文に段落ごとに空白行を挿入させていただきましたことを合わせてよろしくご了承ください。

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